ねこ脚のついたアンティーク風バスタブのミニチュアです。 1/12サイズ
1mm厚の銅平板を叩いて形成しました。 鍛金という手法です、そのおおよその過程を示します。
1mm厚みの銅板を直径約130mmに切り抜きました。
バスタブの底面や、同じ深さになるところを線で書き込みます。
この作業の前に銅板の内部歪を抜くためガスバーナーで赤熱し冷ましておきます。
凹状に窪んだ木台の上に載せ木槌で叩き銅板を凹状に慣らします。
木の台の下方に先の曲がった太い鉄釘のようなものがさっていますがこれを当て金と言います。 てっぺんが鏡のように研磨されており、この上に銅板をのせ上から金槌で叩きます。 銅板を当て金面に対し適度に傾けることにより接触部分と浮いた部分ができ隙間ができます。 この隙間辺りをめがけて銅板の上から金槌でで叩くと隙間辺りに銅が寄せられ全体として変形してゆきます。
底面から縁面まで円く叩き変形させます。 金槌で叩いた跡がつきます。
皿状から鉢状にだいぶ変形しました。 このくらいの大きさと深さになると普通の当て金が鉢の中に入らなくなります。
そこで、鉢のなかにあらかじめ作り置いていたヤニを入れます。
ヤニとは松ヤニと珪藻土、松のスス、菜種油を配合したもので常温では硬く固まっており火にかけ温度をあげるとドロドロになるものです。
今ヤニの塊をガスコンロで温めているところです。
鉢一杯にヤニで満たし、鉢を逆さにしてもこぼれおちない程度のときを見計らい板の上に引いておいたヤニに載せます。
鉢の中にヤニが無い空洞状態をつくらぬようにして板上のヤニと合わせます。
ヤニだけ見れば鉢の中の山と板上の裾野といった感じとなります。
ヤニが適当に暖かいうちは鉢の外側から金槌で叩いてゆくと目指す形状になるように銅の変形を内側のヤニが受けとめてくれます。 当て金と金槌で叩くよりかなり自由度がまします。
一方、銅は叩くと固くなり変形しにくくなります。 そうした時は銅鉢をヤニから外し赤くなるまで加熱させ冷まします。 このことにより金属内部の結晶が整頓されふたたび加工しやすくなるように軟化します。
更に、ヤニは適度な温度から冷め硬くなると希望する銅の変形を受け止めなくなります。
この様にこの作業はガスバーナーの火炎でヤニを加熱したり、銅鉢を外したり戻したり煩雑なものとなります。
この形状になるまで数千回は金槌で叩いています。
鋳造して用意しておいた猫脚4本を底面に針がねで仮固定します。
銀を主体とした合金をバスタブと脚の隙間に溶かしこみ接合します。